景観講座

平成21年度 第2回 掛川市景観市民講座を開催しました



平成22年3月17日(水)、平成21年度掛川市景観市民講座(第2回)の掛川市景観市民講座~ワークショップ~
『私たち自身が、価値ある景観を創ろう、守ろう』が掛川市竹の丸にて行われました。
■テーマ
掛川市では平成19年度より、まちの景観をあらためて見つめ直し、
よりよい景観とは何かを考えるための景観講座を開催してきました。価値ある景観を創り、守るために何ができるのか。3年間の景観講座を振り返りつつ、多くの方の意見を発表していただく場として、「掛川市景観市民講座~ワークショップ~」を開催します。
■講座概要
過去2年間の概要紹介と意見発表、意見交換
1.概況発表:講座ですすめてきたこと、検証できたこと
2.事例紹介:気になる景観事例紹介
3.景観計画素案報告:景観計画素案報告(掛川市より)
4.意見交換:感想、講座に参加して理解を深めたこと
5.まとめ:景観を創り、守るために踏み出そう
■内容
 概要紹介では、NPO法人スローライフ掛川理事の佐藤雄一より、
過去3年間の景観市民講座の概要を説明。
今までの講座の展開テーマとして、「河口と海岸」「里山」
「まちなか みち」「良好な景観/掛川」「良好な景観/大須賀・大東」「シンポジウム」「今回」の説明、キーワードとしては「景観は創るもの」「景観は教え、育むもの」「保存でなく保全」「今あるものをどう生かすか」「あるものさがし」「景観が資産になる」「市民からの提案が行政に生きる」が出されました。
 その後、画像を見ながらの事例とともに、3年間通じて講師をお願いした 東京学芸大学鉄矢悦朗准教授の言葉から「大切なのは割り切らないこと」「ゆれるまなざしが大切」が紹介されました。
 
 掛川市役所都市整備課計画係より、掛川市景観計画(素案)について詳細の説明がされました。
 意見交換では、「地域に根ざした計画にしていくためには、地区ごとに課題を見つけていくことが大事」「地域住民が自分のまちの魅力に気づき、自信を持つことが大切」などの意見が出されました。また、「子どもの頃から景観について考えることが大事」という意見に対し、参加していた小学校の先生から「景観も含めたまちづくり教育をすすめたい」という意見も出されました。
◎行政より
・景観条例ができてからがスタートである。
個々のまちづくりは個々のエリアの色に合った形のものを創って行かなければならない。ルール作りをきちんとしていき、無秩序な建物を許してしまうことのないようにと、市では考えている。
◎NPOより
・今までの景観講座からのテーマおよびキーワード。
『景観とはただあるものではなく創るもの』『景観は教え、育むもの』『保存ではなく保全』『今あるものをどう生かすか』『あるものさがし』『景観が資産になる』『市民からの提案が行政に生きてくるというのは、ごく当たり前の話』『景観に関しては日々の生活の中で景観を見ているのは生活者である市民』『生活者がこの景観を生かしていくべきだと行政に提案し、それが生きていくというしくみが必要』
◎参加者より
・見過ごすと、取り返しのつかないことになる⇒無秩序な形や色合いの家など、規制できない状態になる。
・景観⇒日常の生活そのもの⇒生活の中の価値観⇒生活を見つめなおすきっかけとなる。
・経済と道徳⇒経済と景観に置き換える。
・続けること⇒長い時間を掛けて周りに協力しようと思える状況をつくる。
・子供のうちから景観について考える機会を作る ⇒景観のセンスを磨く。
・一方で、景観とは特定の地域のみのものではない⇒こだわりすぎると、その地域のみのコンセンサスで終わってしまう。仕組みづくりが大切。
・残そうという考え⇒市民の考えの統一性、地元の統一性。
・広く他を知ること⇒地元のよさを知ることにつながる。

平成20年度 第3回 掛川市民景観講座を実施。

12月6日(土)、平成20年度掛川市景観市民講座の第3回、「良好な景観を検証する~旧掛川地区フィールドワーク(掛川市の印象をつくっている景観を検証する)」が実施されました。
[講座の目的]
平成20年度、第2回目の掛川市景観市民講座は、旧掛川地区の「掛川の印象をつくっている景観」をフィールドワーク先とし、東名高速掛川I.C、新東名高速倉真PAと田園風景、JR掛川駅北口・南口を検証しました。その後、掛川市立中央図書館地下会議室にて、景観の整え方、保存の仕方、改善の仕方など研究、講師と共に意見交換を行いました。

[講師]鉄矢悦朗(てつや えつろう)氏
建築家、東京学芸大学准教授、NPO法人「調布まちづくりの会」理事。
掛川との関わりは、2004年に「掛川ひかりのオブジェ展」に学生有志と参加して以来。NPOスローライフ掛川主催「掛川ライフスタイルデザインカレッジ」のフォーラム講師を務める。昨年度の掛川市景観市民講座でも全3回の講師を務める。東京都調布市在住。

[ポイント]
①まちの第一印象を決める「玄関口(駅・インター)」と、玄関口をつなぐ空間であり、掛川市の対外的なイメージをつくっている「田園空間」を題材とする。
②整備されたJR駅と高速I.C、これから整備される高速I.CとPAを検証する。
③訪れる人が初めて出会う掛川として、景観がどうあるべきか、どう創造するか、考えてみる。
[スケジュール]
8:20 集合・受付 (掛川市役所正面玄関)
8:30 バス乗車・移動 (車中でブリーフィング)
8:45 景観検証1:東名高速 掛川I.C (車中より見学)
9:20 景観検証2:新東名高速 倉真PAと田園空間(車中より見学)
10:20 景観検証3:JR掛川駅 北口・南口
11:15 レクチャーおよび意見交換会 (掛川市立中央図書館地下会議
室)
12:45 終了・バス乗車・市役所にて解散
[内容]
1.はじめに
■事務局 掛川市都市整備課より
本日は、たくさんの方にご参加いただきましてありがとうござい
ます。午前中、掛川の顔となる玄関口の景観をNPOの皆さんと一緒に見ていただ
きます。よろしくお願いします。
■講師挨拶 鉄矢悦朗(東京学芸大学准教授)
今日は、お出迎えする空間を見ていただくということです。視点のヒントとして、出迎える、人と出会う、帰ってくるとき、そのときの相手の気持ちになって考えてみることに心がけてください。その人の気持ちになって、景観の要素となるものを観察してほしいと思います。
あと、ポジティブ、ネガティブのちょうど真ん中の位置には立たないでください。悪いなら悪く、好きなら好きで、真ん中でどっちでもいい、という姿勢はとらないでほしいと思います。気持ちがゆれたり、偏ることが大切です。今日は、どうぞよろしくお願いします。

2.観察
■観察場所 
東名高速掛川I.C(車窓より)
新東名高速倉真PA
田園風景(車窓より)
JR掛川駅北口・南口

3.講義 東京学芸大学准教授:鉄矢悦朗
私たちが今やらなくてはいけないのは、伝えるべきものをジャッジすること。今、このジャッジを誰がしているかといえば、土地を持っている人であり、不動産やさんだ。「この家は古いから建て替えよう」とか「この土地をもっと有効活用しよう」とか、ジャッジが経済という基準で動いてしまっている。そして、気がついたら「あれ残しておけばよかった」となる。壊すと2度と戻らないことを肝に銘じて、ジャッジを丁寧にしなければいけない。
今年度、3回シリーズでやってきた「良好な景観」。私も「良好な景観とは何か」常に考えてきた。良好とは、個人の好みによるものだが、相手の気持ちになっていくと、みんなで快適に暮らすためにはどうしたらいいか、という視点が出てくる。愛着のある景観が強いともいえる。
有名な京都タワーだが、できた当初は景観論争がすごかった。何年も経ったあと、あれを見ると「京都に帰ってきた」という印象の人が増えてきた。時間が作った愛着が出てきたということ。この愛着が、いいものであり、くせものでもある。愛着とは何かといえば、「なんともいえないもの」。なんともいえないと、伝わらない。これを、きちんと伝えられるように明文化することが重要。こうしたことは、コンサルタントといわれる専門家がお手伝いしてくれる。
これから市が景観計画を作っていくといっているときに、どうして事前に皆さんにこうして集まってもらっているかといえば、愛着の明文化がコンサルタントにはできないから。愛着のある場所を教えてあげなくてはいけない。
あと2年くらいかけて作っていくときに、市が呼びかけたときには何かしらの反応をしていって、少しコンサルタントを困らせるくらいにしなければいけない。「そんな文章じゃあ伝わらない」というくらいいわなければ、私たちにとっての良好な景観、愛着ある景観は残らない。この3回をこれだけで終わらせないために、なるべく声を出すこと、みんあでいい景観をあぶり出して、歴史を作っていくことが重要になる。

4.意見交換
■参加者感想
[東名I.C]
・インター8景の意味を知ることができてよかった。
・高速をでて、初めてにる正面看板について、統一して欲しい。矢印、地名の看板はいい。
[新東名倉真PA]
・今日立った新東名の場所から見る景観は、今後一生見ることのできない景観だといわれたが、破壊の空間を見に行ったような気がした。
・新東名を観光面に使うなら、アクセス道路の整備が必要だと思った。
・アクセス道路の必要性もわかるが、自然との折り合いが難しい。倉真の皆さんの熱心な様子が伝わってきた。
・倉真のPAはトンネルとトンネルの間にあると聞いた。きっと、暗いところから出てきて星がきれいだと思う。天体観測できるPAができると面白い。掛川には新星を発見した西村さんもいる。空気が澄んでいる証拠。そうしたエピソードを活用できたら、日本一の、世界で一つの、PAができるのではないか。
・倉真の森は、杉やひのきだけでないのが素晴らしい。
・破壊と自然をどう考えるのか、難しい。あるべき自然と開発と、どう折り合っていくのか。
・倉真の山が鉄塔だらけの風景は、ふるさとの山を壊しているが、でも必要なもの。負の遺産でもある。

[田園風景]
・田園風景を見て、家が多くなったと感じた。夕方の風景も素晴らしい。
・まちなかを出ると、すぐに懐かしい田園風景に出会えるのがいい。
[駅周辺]
●駅について
・天浜線の駅の構内がいい。新幹線が入ってきて、東海道線の電車が入ってきて、天浜線の電車が入ってきて、3つあるのは魅力だ。掛川駅に降り立った人は、天浜線を見て「これはどこに行くのかな」と思うのではないか。
・駅舎の釘やつばめの巣など、視野を広げるものの見方があるということを教えてもらった。そういう違う視点で、ものを見ていきたい。
●駅周辺の樹木、看板などについて
・掛川駅周辺に緑や余分な空間があるのが素晴らしい。
・駅から出たところにある掛川市全体の看板だが、北口の看板は海が下でいいが、南口の看板は海が上にあってほしい。その方がわかりやすい。
・駅の周辺を歩いて面白かった。何か通年型のイベントを実施するなど歩く仕組みができるといい。
・駅周辺の紅葉がきれいだった。花があるともっといいと思った。
・図書館周辺の蓮池、紅葉と弁天橋、報徳図書館が素晴らしくいい。でも、観光客のものという印象があり、地元の人が自分たちのものと感じる何かがほしい。
●中心市街地について
・駅から図書館まで久しぶりに歩いた。シャッターが下りている店が多くてびっくりした。
・駅から城までの道は、あれだけ広く、整備されているので、いつかは歩行者天国にして、子どもたちがワイワイ遊べるスペースになればいい。
・40年ほど前、掛川駅を降り立った正面に茶の木のオブジェがあり「ようこそお茶のまち掛川へ」の文字があった。ぜひ復活させてほしい。
●木造駅舎について
・掛川駅の北口は歴史のまちで古い駅舎がある。南口は新しいまちで近代的な駅。そういう対比できる駅は他にはないので、ぜひ残してほしい。
・木造の天守閣があり、図書館があり、そういう木の文化を活かしたまちづくりをしているので、ぜひ木の駅舎は残してほしい。
・天浜線の駅の形はとんがり帽子でいい風情だったが、今は電光掲示板で見えない。赤字路線で経営的に必要なのかもしれないが、駅を見直すとき、天浜線の駅舎も一緒に見直してほしい。
・夜の駅舎の窓からもれる光はやさしい光に感じて、「帰ってきたなあ」と感じる。ぜひ、掛川駅を残してほしい。
・木造駅舎はぜひ残してほしい。もし建て替えるなら、今使ってある木を再利用する形にするなどしてほしい。

[全体として]
・テレビの宣伝より、「このまちっていいね」という口コミの力が大事。
・くろがねもちの街路樹が素晴らしい。春夏秋冬、すべての季節に楽しめるものがあったらいい。
・つま恋のAPバンクコンサートには8万1千人が一堂に集まる。参加させてもらって、人は集まるのだと思った。せっかく全国から来てくれた人に、他にとどめる工夫が少しもされなかった。
・新東名のひらけたところで、ひっつき虫がついた。我々は、景色を見て、悪いもの、いいものを話すとき、引っつき虫のように「掛川のよさ」という種子をみんなに着けていくことが必要だと感じた。そして、市やNPOは落とさないように、仕掛けを考えたり、形状を考えたりしていくことが必要だと感じた。

■講評・まとめ
東京学芸大学准教授 鉄矢悦朗
1点だけ、気になったことを。「久しぶりに掛川に来て、シャッターが閉まっていて驚いた」という意見があったが、だから、シャッターが閉まってしまうんでしょうね、と感じた。「久しぶりに掛川に来て」ではなく、毎日掛川に来て買い物をするようにならなくてはシャッターは閉まってしまうということ。「毎日買い物をするものがない」のではなく、毎日買い物したいものは何なのか、お店の人に教えてあげなくてはいけないということ。面倒くさくても、大きなお世話という第一歩を踏み出さなくてはだめということだ。みんな気づいているが、なかなか出来ないことだと思う。しかし、お店の人に少しずつでも言ってみる勇気を持つことが大切。
駅舎を残す、残さない、いろいろな意見があったが、市民の税金の中でやりますか、という中で動かざるを得なくて、国の指針としては耐震はしていかなくてはならない。皆さんの意見を聞きながら思ったのは、皆さんの中で何が大事なのかを整理した方がいいということ。何を残したいのか。形を残したいなら、周りを全部四角く囲って吊り下げるというスタイルになることだってあるかもしれない。全く新しい建材で同じ形ならいいのか。それとも、「今日、見た古い釘がもったいないとからいい材料は使ってほしい」ということなのか。
夜帰ってきて明り取りの窓からもれる灯りがロマンチックだった、という意見があったが、そういうスケール感を残して欲しいということなのか、そのあたり、自分たちは何を残したいと思っているのか、もう一度整理する必要がある。JRがお金を出して耐震していいものにしようとしているときに、どういうアイデアを出し、どういう工夫を出すかが大事。このままただ「残せ」といっても、JRとい
い握手はできない。いい握手ができることを、私も望みます。

■事務局:NPO法人スローライフ掛川理事 佐藤雄一
JRの事情に立ったり、シャッターを下ろしてしまう家の事情に立ったりすると、「名物駅舎にしたら、見に来るんじゃないか」という論理になる。景観を残せ、ただ言うのではなく、どう見て、どう視点を変えて、どう説明ができるのか、説得ができるのか、が大事になってくるということだと思う。
景観とは、生活や商いや営みと密接に関わっているもの。営みの事情によって左右されるものでもある。皆さんのお話、先生のお話の中でそんなことを思いました。全3回、連続でご参加いただいた方も多くいらっしゃいます。本当にありがとうございました。

5.おわりに
■事務局 掛川市役所都市整備課より
本日は、多数ご参加いただきありがとうございました。
本年度の景観講座は今日でおしまいになりますが、皆さんのご意見の中に「こういう場を作ってもらって、知る機会を得たのがよかった」という意見も多くありましたので、可能であれば、来年度以降も講座を開催していきたいと思っています。また機会があれば、ぜひ皆さんご参加いただければと思っております。本日はありがとうございました。3回にわたり、ご指導いただきました鉄矢先生、本当にありがとうございます。これにて第3回掛川市景観市民講座を終了いたします。

平成20年度 第2回 掛川市民景観講座を開催しました。

11月8日(土)に平成20年度掛川市景観市民講座の第2回、「良好な景観を検証する~大東・大須賀フィールドワーク」が実施されました。
[講座の目的]
第2回目の掛川市景観市民講座は、大東、大須賀地区をフィールドワーク先とし、「掛川市の良好な景観」「お気に入りの風景」「美しい街並みや建築物」など気になる景観として応募のあった「大東地区:モコモコ」と「大須賀地区:横須賀の町並み」の検証を行い、景観の整え方、保存の仕方、改善の仕方など研究、講師と共に意見交換を行いました。

[講師]鉄矢悦朗(てつや えつろう)氏
建築家、東京学芸大学准教授、NPO法人「調布まちづくりの会」理事。掛川との関わりは、2004年に「掛川ひかりのオブジェ展」に学生有志と参加して以来。NPOスローライフ掛川主催「掛川ライフスタイルデザインカレッジ」のフォーラム講師を務める。昨年度の掛川市景観市民講座でも全3回の講師を務める。東京都調布市在住。

[ポイント]
①合併して4年。大東のモコモコ、大須賀の町並みを知っていますか?
②景観は「放っておくとどうなるのか」「手入れをされないとどうなるのか」考えたことがありますか?
③私たちが暮らす掛川市にとって、どんな景観の整え方、保存の仕方、改善の仕方がいいのでしょう?
[スケジュール]
7:50 集合・受付 (掛川市役所正面玄関)
8:00  バス乗車・移動 (車中でブリーフィング)
8:20  景観検証1:大東地域 (モコモコなど)
9:20  景観検証2:大須賀地域 (街並みなど)
10:30 レクチャーおよび意見交換会 (大須賀支所2F会議室)
12:00 終了、バス乗車・移動
12:30 解散(掛川市役所正面玄関)

[内容]
1.はじめに
■事務局 掛川市都市整備課より
昨年以来、景観講座はNPOスローライフにお願いし、年3回、景観の見方、景観の役割、大切さを知っていただく市民啓発のための講座と位置づけ、実施しています。半日になりますが、どうぞよろしくお願いします。
■NPO法人スローライフ掛川
代表 井村征司
昨年から掛川市と協働で、この景観市民講座を実施しています。今日は大勢の皆さんにおこしいただき、大東のモコモコと大須賀の町並みを歩きます。解説してくださる助っ人も合流してくれるということなので、今日はどうぞよろしくお願いします。
■講師挨拶
東京学芸大学准教授 鉄矢悦朗
今、私は学芸大でデザインを教えています。デザインを知るときに大事なのが、「ものの背景を知ること」「時間的な背景、つながりをどう読むか」ということです。ここは江戸時代こうだったんだろうとか、未来まで見通せるようになるので、そういう目で見ていただきたい。その際、できるだけ空間、場所を体験して、かみしめていただきたい。しゃがんだり、立ったり、動いたり、いろんなことをしていただきたい。今回のモコモコは、特に動いているのが楽しい。あと、ストーリーやドラマを考えながらその場に立っていただきたい。ここで、どんなドラマが生まれて、どんな暮らしが営まれているか考えてください。そうすることで、今日の景観はより深く考えられるかと思います。
2.観察
大東地区:モコモコ
大須賀地区:横須賀町並み

3.講義
東京学芸大学准教授 鉄矢悦朗
景観には、「見える景観」と「見えない景観」がある。見えない景観は、雰囲気、聞こえる音、匂い、五感に感じるものなど。見える景観とは、ヨーロッパでは公のスペースに情報を与えるものは、すべて景観の要素と考えるが、日本では、パブリックスペース、公が持っている土地が景観の要素だとなる。見えていても、民の土地は景観ではない。民でやることは勝手だ、となってしまっている。
ヨーロッパでは、昔銀行だった建物が、中がカフェになっているようなところがある。外は古くて、中は新しい。そのギャップが楽しい。楽しいけれど、中と外のギャップを埋めるのに最初は苦労した。どうして、建物を建て替えないのかといえば、外は公の街並みを作っているスペースという意識があるから。だから、外はいじらないで残し、中だけ新しいものにする。
今日、横須賀の町並みをまちの人と歩いて、まちのエピソードを聞くと、身近な感じが出てくる。そういうことが、「まちづきあい」が上手になるということで、住んでいる人にとっては「まちづかい」がうまくなるということ。こういうことが、景観という中でゆるい啓蒙になってくるのではないか。
4.意見交換
■参加者感想
[モコモコ]
・はじめてモコモコに来た。登ってみて360度の視野があり楽しい気持ちになる。
・お墓モコモコを見て、日常の風景の中にご先祖さまがいるのはいいなと思った。
・今日は「モコモコって何?」という興味で来た。モコモコという
ネーミングが素晴らしい。
・モコモコの上から見る景色と下から見る景色が違う。
・モコモコに登ると子どもの頃の感覚がよみがえる。上に登ると風を感じた。
・モコモコに人がいることでさらにいい景色になる。
・モコモコをまず大人が面白がって遊べば、子どもは「面白そうだ」と登りにくるはずだ。
・モコモコは小さいころの遊び場。今日、久しぶりに登って新鮮な感動を覚えた。
・低いのに、登ってみると高く感じ、とても楽しい。大東の財産
として再発見できた。
・モコモコはただの小山なのに、登ってみると楽しい気持ちになる。子どもの頃、遊んだという話を聞いて、大人も子どもも遊べる場所になればいい。

[横須賀町並み]
・郡上八幡宮や金沢、高岡などに行かなくても、地元にこんな素晴らしい町並みがあったのかと驚いた。
・その土地を愛している人から話を聞くのは親近感が沸く。そのまちの奥行きをさらに感じる。まちづくりは人が原点だと感じた。
・横須賀には、まちづくり、まちづきあい、住んでいる人たちの気持ちが通い合っている感じしていい。
・説明を受けながらまちをまわるのは、絵を見るのと似ている。見方がわかると素晴らしさもよくわかる。見る目を養うことで、人から教えてもらうことが心にしみてくる。見る目を持った人が増えることが景観づくりにつながる。
・町並みがそのまま残っていて素晴らしい。人と場所の関係が保たれることで再生すると感じた。同じ掛川市なので、力を合わせてなんとかしたい。
・まちを見て、今の暮らしを戻す必要があると感じた。横須賀の町並みを見て、掛川のあるべき姿を考えた。
・細い路地や町並みは、向こうに何かあるかもしれないというワクワク感がある。
・これからは「大きなお世話」をしなければ、いいまちはできないのかもしれない。
・まちをみんなが大事にしているのを感じた。人と人がつながっていくことが面白い。
・雨が降れば水たまりができる道を久しぶりに歩いた。コンクリートだらけが発展なのかと疑問に思った。
・おむかえさんとあいさつのできる道幅はいい。
・生活している人のかもし出す雰囲気、まちの営みを、歩いていると感じる

[横須賀のまちの住人から]
・見ていただいたとおり、横須賀は決して観光地ではない。でも、こういうまちが好きだという人に来てもらいたい。
・横須賀のまちに、今までなかった信号ができた。ルールでなく
モラルで成り立っていたのが、信号ができたことで問題が起きている。目と目で判断していたのが、目を合わせなくなった。「お先にどうぞ」「ありがとう」などの目での会話もなくなった。

■事務局:NPO法人スローライフ掛川理事 佐藤雄一
毎回のレクチャーを通じて、景観というのは人の手が入ることで育つものだ、ということを教わってきた。皆さん、モコモコに登ったとき、登っているからもちろん自分が登っている姿は見ていないわけだが、人がモコモコとか関わっている状態を下から見ると、これが非常に面白い。子どもを遊ばせろ、という話がありましたが、まずは大人が遊べ、と思います。つまり、大人のいい遊び場として使えないか、ということが、大東のアートフェスティバルの一つの考え方です。人間のDNAの一つに、高いところと低いところに行きたい、というのがあるんですよね。高いところにいとも簡単に行けちゃう、というのがDNAにふれるのではないかと思います。
■講評・まとめ
東京学芸大学准教授 鉄矢悦朗
皆さんのお話を聞いていて、いい言葉がたくさんあった。「まちづくりは人が原点」「見る目を持った人が増えることが景観づくりになる」「人と人がつながっていくことが面白い」「人と場所の関係が保たれることで再生する」「人が手を引いたらいけない」「まちの説明を聞くと、そのまちの奥行きをさらに感じる」「草まできれいだ。でも雑草と呼ばれている」など。
雑草の話を聞いて、思い出したことがある。雑穀の雑はバラエティーの雑なのだと教えてもらった。もともと、雑穀とはひえとか粟とか名前が別々にあったのだけれど、西洋からミレという穀類の総称が来て、それに対する日本語がないということで「雑穀」とついた。雑穀というと、日本では下に見られるが、実はそうではなくバラエティに富んでいるということ。
この企画は、こうして少しずつでも言語化できていることすばらしい。人に伝えるときの、「何がよかったの?」に対して「なんか、よかったんだよね」以上のものが蓄積されている。我々も、細かい違いを理解していかなくてはいけない。「大きなお世話をお互いにしなければいけない時代」という意見があったが、昔は大きなお世話が見えなくてもお世話し合っていた。今は意識的にしなければできない状態。そういうことを、私も再確認したり、一緒に勉強させてもらった。
景観やまちづくりの話をしていると、「残す」という表現が出てくるが、残すということは作るということ。決して、立ち止まっていて保守的なわけではない。そういうポジティブな、確信犯的な「残す」もあるということを認識しなければいけない。
奈良県の大宇陀町でやったことなのだが、大学生が中学生にまちを案内してもらうということをやった。
大宇陀町は、平成18年に伝統的建造物群に指定されている。大学生にまちを調査しろという宿題を出し、中学生に案内してもらった。まちのいいところを発見してこいと。初年度、大学生がまちの人にインタビューして、いろんな面白い話をいっぱい聞いてきた。でも、大学生はよそ者。すごくもったいないと思った。ある私塾にお願いして、形だけでもいいから子どもたちを案内人にしてくれと頼んだ。一緒に歩いて、大学生は課題だから、子どもにも聞くが、そこで出会った大人にもインタビューする。そうするとおじさんたちがいろんな話をしてくれる。「あそこは昔、ビリヤード場で、おまえんちのおやじさんはビリヤードがずいぶんうまかったんだぞ」というエピソードを聞いたり、「あそこは昔、映画館だったんだぞ」とか、素敵な話がたくさんでてくる。そういうのを大学生の取材を通じて、まちの子どもたちが知ることができる。私は大人の話を子どもに聞かせたかった。あまりに日常だから、そういう話は普段は話さない。知っていて当然だと思ってしまっている。でも実際は話していない。そういうことが、学校の総合学習などで入ってくればいいとおもうのだが、学校の先生もお忙しいので、市民の応援がどうしても必要。子どもに伝えるというのは、そういうところで伝えられるといいと思っている。そのとき、大学生とか建築系の大学生が入ってきて、媒体のようになって、継続できればいい。終わったあとの感想で、中学生が「ぼくは必ず大宇陀町に帰ってきます」という言葉を聞いて、おじいちゃんたちを泣かせていた。
こんなところで、終わらせていただきます。ありがとうございました。
 
5.おわりに
■事務局 掛川市都市整備課より
本日はありがとうございました。これだけたくさんの皆さんが、まちを語れる目が養われてきたのではないかなあと感じまして、これからの市の景観づくりに期待できるのではないかと思いました。