景観講座

平成19年度 第1回 掛川市景観市民講座 「河口と海岸の景観を考える」が行なわれました。


平成19年8月5日(日)、掛川市景観市民講座の第1回「河口と海岸の景観を考える」が行われました。「人が関わり育てることで美しい景観となる」という考えのもと、よりよい景観とは何かを市民の目線でまちづくり考える研究者、プロカメラマンと共に考える講座です
[スケジュール]
 7:15~  掛川市役所玄関集合
 7:30~ 8:10 バス移動
 8:15~ 8:45 フィールドワーク:菊川の河口と海岸(掛川市国安)
 8:50~ 9:10  バス移動
 9:15~ 9:45  フィールドワーク弁財天川の河口と海岸(掛川市沖之須)
 9:50~10:10 バス移動
 10:10~10:30  準備、休憩
10:30~11:45  ワークショップ大東支所会議室にて
11:50~12:30  バス移動
12:30  掛川市役所に到着・解散

1.はじめに
[事務局より]
今回、菊川の河口と弁財天川の河口の二カ所に行く。整備された河口と整備されていない河口。どちらがいい悪いではなく、景観に対してどう意識が向くかが大事。景観とは何か、どう見たらいいか、どうしたらいい方向に意識が向くかを考えるきっかけになればいい。
2.フィールドワーク後のワークショップにて
[講師:鉄矢悦朗氏]
・景観はつくっていくもの。
・植生が豊富という日本的である事をもっと大事にして、景観のデザインも考えていけばいい。
・景観にとって何が主役か考えること。
・景観は、隠されたエピソードをその土地の人が語れるかどうかで魅力が出てくる。
・プロセスを経ることで、エピソードが生まれる時間ができる。語れる時間がある。語れる景観になる。
・見慣れる怖さを感じて欲しい。見慣れたら、「やばい」と思った方がいい。
・目立たなくては売れない状況が、デザインをペテンにする。消費者の質も問われている。
・「海へ走って行きたい」「砂の上を転がりたい」、そういった期待感がある景観を。
・畑や茶畑も景観として捉えるような仕組みを取り入れることが大切。
・世界遺産があるように、市民が勝手に「掛川遺産・子どもたちに語り継ぎたい景観」「掛川遺産100選」を選んでしまえばいい。

[講師:小川博彦氏]
・遠州の海は山から砂が運ばれてくるから波が幾重にも来る。遠浅の海でなければない。砂がなくなればこの風景はなくなる。
・流されている砂の大事さ。砂が上流から流れてこなくなる現実。海辺の景観を考えるとき、背景としてきちんと考えなくてはいけない。
・人は水際を歩きたい。水にさわってみたくなる。海と人がつながる場所。海と人との交流が、人の作法がなくなったことで規制だらけになってしまった。
・「弁財天海浜公園」と書かれた木の看板の後に、注意書きだらけの看板がある。大事なことが書かれているのはわかるが、海へ走り出したくなる気持ちにストップをかける。

[参加者より]
・今まで、観光パンフレット的な見方しかしていなかった自分に気がついた。色々な見方で景色を見ることの大事さを感じた。
・昔は弁天も国安も賑わいがあった。人のいぶき、交流があった。
・海は命が継承される場。生命を育む場。そういう場所が減っていることは驚異である。
・菊川は一級河川、国の管轄。弁財天川は二級河川、県の管轄。どっちがいいかはそれぞれの価値観だが、弁財天川の橋の安普請が妙にほっとさせる。
・「日本一」ということよりも、地域にとってどうなのか、住む人、訪れる人にとってどうなのか、ということが大事なのではないか。

3.終わりに
[事務局より]
・今日見てきた中でも、すぐに変えられるもの、すぐに変えられないものがある。「やめようぜ」と言えば変えられるものから変える行動を。
・潮騒橋は価値を植え付けられている。「日本一長い」という価値観が、景観にフィットしているかしていないかは議論されなかった。本当に大事なのは、日本一長いことよりも、地域にとってどうなのか、住む人、訪れる人にとってどうなのか、ということではないか。
・あるものさがしの景観。今あるものをよりよい財産として意識していくための顕在化が大切。
※掛川市景観市民講座は、高校生以上ならどなたでも参加できる全3回の講座です。第2回は「里山の景観を考える」。平成19年11月11日(日)に予定しています。
■第1回 講師プロフィール
鉄矢悦朗(てつや えつろう)氏
建築家、東京学芸大学准教授、NPO法人「調布まちづくりの会」理事。掛川との関わりは、2004年に「掛川ひかりのオブジェ展」に学生有志と参加して以来。NPOスローライフ掛川主催「掛川ライフスタイルデザインカレッジ」のフォーラム講師を務める。東京都調布市在住。
小川博彦(おがわ ひろひこ)氏
小川写真事務所主宰、プロカメラマン。掛川市市勢要覧の撮影を手がけるなど、掛川周辺での撮影は多い。NPOスローライフ掛川主催「掛川ライフスタイルデザインカレッジ」のフライフィッシングとネイチャーフォトグラフィーの講師を務める。共著に『サイトフィッシングの戦術』。富士市在住。